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11/28 社説・五輪招致表明 札幌の未来開く構想こそ

(2014-11-28)

報道機関

北海道新聞

見出し

社説・五輪招致表明 札幌の未来開く構想こそ

配信日

20141128

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/576965.html

◆内容◆          

札幌市の上田文雄市長がきのう、2026年の冬季オリンピック・パラリンピック開催都市に立候補する方針を正式に表明した。

 実現すれば1972年以来2回目となる。多額の資金が投入され、停滞する地域経済へのカンフル剤となるのは間違いない。

 しかし、問題は莫大(ばくだい)な費用負担である。民間資本の活用などを想定しているが、市の負担が予想以上に膨らむ懸念は拭えない。市民にそのツケが回され、行政サービスが劣化しては本末転倒だ。

 課題克服には五輪を札幌の未来につなげる構想力が重要だ。冷静にあるべき姿を模索したい。

■財政への影響を懸念

 上田市長は市議会で、招致の理由について「成熟都市としてのブランドと市民の誇りを醸成する」と説明した。「次代を担う子供たちに向けた未来への投資」とも強調した。

 直前に市が実施した18歳以上の市民1万人へのアンケートで、賛成派が67%に上ったことが背中を押したのは確かだ。

 経済効果への期待も大きい。札幌市が広告代理店に委託してはじいた五輪開催の経済効果は、札幌市内だけで5404億円だ。全道では7737億円に上る。

 こうした数字を背景に、市議会や経済界が招致を強く要望したことが、市長判断に影響したのは明らかだろう。

 ただ、アンケートからはもう一つの側面が浮かび上がる。

 開催時の関心事で「開催費用や維持費などの財政面」がトップとなった。市の負担が大きいことに多くの市民が強い不安を抱いている証左である。

 市が試算した開催経費は4045億円に上る。国や道に支援を求めるほか、選手村などの整備では開催後にマンションやホテルとして利用できるため、民間から資金を調達するという。

 それでも市単独の負担は約715億円と巨額だ。40年間で支払う場合、額は毎年20億円になる。

 しかも、道路や鉄道など交通インフラの整備費はここには含まれていない。経費が試算以上に膨らむのは容易に察しがつく。それは当然、市の財政を直撃する。

 国や道の支援がどの程度になるのかが見えていないのも懸念材料だ。経済情勢が悪化すれば民間活力の導入が遠のくこともある。

 20年東京五輪・パラリンピックで、東京都が最近示した競技施設の整備費は、昨年の招致時の試算を約1千億円上回った。新設を計画していた12施設のうち、3施設を中止したにもかかわらずだ。

 主因は建設資材の高騰である。当初計画のままでは3千億円も膨らむ。経費を的確に予測することが難しい典型例といえる。

 開催後の施設の維持にも目を向ける必要がある。

■自然との共生も重視

 1998年の長野冬季五輪の主会場となった長野市には、今も施設の維持管理に年間約10億円の負担がのしかかっている。こうした事態は避けねばならない。

 招致に向けては、次世代に負の遺産を残さぬよう、できる限りコンパクトな大会を目指すべきだ。

 五輪憲章に「環境」についての項目が加えられてから今年で20年になる。冬季五輪開催となれば、自然との共生も問われる。

 先日、北海道新聞に1通のメールが届いた。72年の前回五輪で、アルペンスキーの滑降コースとなった恵庭岳を例に、自然破壊への心配をつづっていた。

 コースづくりのため伐採された原始林は、五輪後に植樹されたものの、42年たった今も森と呼ぶには程遠い状況との指摘だ。教訓にしなければならない。

 再び札幌開催となってもコースは見当たらない。新設も難しい。

 道内には条件に合った施設が富良野市や後志管内ニセコ周辺にある。他の競技も含め、広域での連携も視野に入れたい。

 72年大会にはなかったパラリンピックも開催される。多くの障害者が札幌を訪れる。それに対応するまちづくりが求められる。

 日本は急速な高齢化が進む。札幌も同様だ。

 障害者に優しいまちは、高齢者にとっても生活しやすい場である。札幌をそんな都市に変えていく発想が何より大切である。

■経済状況で見直しも

 26年の開催都市は、まず日本オリンピック委員会が16年に国内候補地を選考する。

 引退を表明し、在任が半年を切った上田市長が招致を表明したことに疑問が少なくない。準備に時間を要するとの判断だろうが、市民への丁寧な説明を求めたい。

 ノルウェーのオスロが財政難で招致活動から撤退した例もある。表明したといっても、社会情勢や経済状況の変化によっては計画を見直していく姿勢もまた大事だ。

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