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11/9 羽生の衝突事故はなぜ起きたのか

(2014-11-09)

報道機関

THE  PAGE

見出し

羽生の衝突事故はなぜ起きたのか

発行日

2014119日 1000

http://thepage.jp/detail/20141109-00000003-wordleafs?utm_expid=72375470-20.R0Pqy_MbRfeXQAc6SF7PFQ.0&utm_referrer=http%3A%2F%2Fthepage.jp%2F

◆内容◆ 

衝撃的なアクシデントは6分間の公式練習のさなかに起きた。

フィギュアスケートのグランプリシリーズ第3戦となる中国・上海大会。8日は、男女のシングルフリーが行われたが、その男子フリーの最終滑走組の公式練習で羽生結弦(19)が、後ろ向きの滑走から前を向く瞬間に、同じような動きをしていた中国のエン・カン(閻涵、18歳)と正面衝突。
 羽生の額が、エン・カンの顎にぶつかった。その凄まじい衝撃でおそらく脳震盪を起こしたのだろう。羽生は、顔面からリンクに打ち付けられ、その際、顎を強打。仰向けになったまま微動だすることができなかった。

 額と顎からはひどい流血。うつろな表情で、痙攣を起こしたようにリンク外に引き上げた羽生は、頭に肌色のテーピングをグルグルまき、あごの裂傷部分に絆創膏が張られる痛々しい姿で再び、公式練習のためリンクに現れた。無意識なのか、涙があふれている。滑り出したが、足はよろけて顔は真っ青。それでも競技出場を続ける意思を示すかのようにジャンプを試した。この時点で一方のエン・カンは棄権を表明していた。羽生のコーチや周囲は、欠場を薦めたが、オリンピックチャンピオンは、がんとして受け付けなかったという。地元中国のエン・カンも、その羽生の姿に刺激を受けたのか。棄権を撤回して、フリー演技を強行した。だが、満足にジャンプはできない。

 そして悲壮な決意を胸に羽生もリンクに現れた。

 冒頭の4回転サルコウ、4回転トゥループと続けて転倒したが、4回転は認められ基礎点はキープした。後半の新プログラムに入れていた4回転のコンビネーションジャンプは回避。力のなくなった後半は、3回転ループ、3回転ルッツでさえ転倒。計5度の転倒をしたが、4分半のフリー演技を最後までやりきってみせた。上海の会場は、その羽生の魂の滑りに感動の涙と拍手が広がった。15460の得点を見た瞬間、羽生は号泣した。結果的に2位となったが、おそらく意識が朦朧とする中、金メダリストの尊厳と責任感だけを、強靭な精神力に変えて演じきったのだ。奇跡とも言える上海の4分半だった。

 だが、そもそも、なぜアクシデントが起きたのか。

 元全日本2位で、現在は、インストラクター及び評論家としてWEBサイトのアスリートジャーナルで執筆をしている中庭健介氏に話を聞いた。

VTRを見ると、お互いが後ろ向きでスピードに乗って振り返った瞬間にぶつかっているので、どちらに責任があるとはいえません。選手は、6分間という限られた時間の中で、あれも確認したい、これも確認したいと、焦りの中でチェックを行っているので、自分のことにしか集中できていない環境にあります。
 しかも、フリーの前は、確認事項も増え、羽生選手は、4回転を3回も入れる初めてのプログラムに挑む直前だったからなおさらでしょう。エン・カンは、かなりのスピードのある選手なので、想像を絶する衝撃だったのでしょう。練習場でも、こういう事故が起きる危険性はあって、私も何度か見ていますが、これほどの大きなアクシデントは初めてです。ぞっとしました。
 痛みもそうでしょうが、もう頭が真っ白で、ぼーっとしたままの状態で演技をしたのではないでしょうか。足に力が入らずに踏ん張りが利かずに跳べないのは当然です。それでも、2度の4回転ジャンプを途中で“パンク”させることなく、締めたのは、驚くメンタルの強さです。あの状態で4回転から逃げませんでした。
 オリンピックチャンピオンになって羽生選手が大きく成長したことを示すような気持ちで勝ち取った価値のある2位だと思います」

実は、公式練習中の激突事故は、これが初めてではない。60メートル×30メートルのリンクに6人の選手がひしめきあって滑走するのだから、接触事故がおきないほうが不思議なのかもしれない。2008年の全日本では、同じくFPの最終滑走組の直前6分間練習で安藤美姫と村主章枝がぶつかって転倒した。このときはお互いが後ろ向きではなく、安藤が身構えたので、そこまで大きな怪我には至らず、2人共、そのまま競技を行ったが、少なからず演技に影響は出ていた。

 2010年のGPファイナルの前日公式練習においても、高橋大輔と小塚崇彦が激突している。このときは、自らの曲に乗って後方へステップしていた高橋に、後方からジャンプをしようとしていた小塚がぶつかった。競技直前の6分間練習ではなく、SPの前日練習だったこともあって、2人ともに試合出場を果たしたが、後日、ダメージの大きかった高橋選手は「痛みは衝突した翌日以降に出てきて、首がむちうち状態になっていた」と語っていた。

 こういう事故をなくす狙いもあって、昨シーズンのGPシリーズの男女シングルは、12人でなく10人の出場で、滑走も5人、5人に分けられた。直前の6分間練習を含む、公式練習も一人減った5人で行われるので、必然的に事故は減っていた。だが、今シーズンから再び出場選手数が12人に戻ったため、リンク内の“混雑”が復活していた。腰痛の影響でこれが今シーズンの開幕戦となった羽生にしてみれば、そういう環境の変化が事故の遠因となっていたのかもしれない。

 前述の中庭氏は、こんな提案をする。

「グランプリシリーズの参加人数が12人に戻ることは、選手にチャンスを広げることになって、世界的なレベルを上げることになるので大賛成なのですが、なんらかの手立ては考える必要はあるでしょう。
 4人を3グループに分けることもひとつの手段でしょうが、競技時間が長くなるので運営に問題が出るかもしれません。
 私は、直前の6分間公式練習の時間を例えば10分間にするなど延長することを検討してみてはどうかと考えます。そもそも、この6分間という公式練習時間が定められた時代に比べて、フィギュアは大きく進歩していて、演技の内容やジャンプの種類、レベルが違ってきています。それだけ試合直前の練習での確認作業が増えているということです。
 空間と人数は同じでも時間に余裕があれば、選手の焦りや緊張は若干緩和されます。今回のような事故を減らすことにつながるかもしれません」

 今回のアクシデントのようにスピードに乗った人と人との衝撃度を、ダンプカーとぶつかった衝撃度と変わらないと算段する専門家もいる。試合後、羽生は担架で運ばれたが、もっと大きな事故につながっていた危険性もあった。
 選手が自衛すると共に、惨劇を繰り返さぬためのなんらかの手立ては必要かもしれない。

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