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11/10 羽生結弦が見せた王者の誇りと、男子フィギュア最悪の事故の背景。

(2014-11-10)

報道機関

Number Web

見出し

羽生結弦が見せた王者の誇りと、男子フィギュア最悪の事故の背景。

発行日

20141110日 

http://number.bunshun.jp/articles/-/822054

◆内容◆ 文:田村明子

何という大会になったのか――117日から上海で開催された中国杯は、誰も予想していなかった前代未聞の事態が起きた。

 男子フリー最終グループの6分間ウォームアップの最中に、羽生結弦が中国のエン・カンとフルスピードで激突するというアクシデントが起きたのだ。

 氷上に倒れた2人のうち、カンが先に自力で起き上がった。羽生はしばらく苦しそうに激しく呼吸をしている様子が見てとれたが、ようやく到着した救急班に支えられて身を起こした。こめかみとあごの傷から流れた血が首をぬらすという悲惨な姿だったが、自力で氷から上がった。よほどの痛みだったに違いない。顔はすっかり青ざめ、目もうつろになっていた。

・本人の強い意志で競技決行。

 まさかこのアクシデントの後に滑るなど、不可能だろう。誰もがそう思ったに違いない。だが棄権をしなかったのは、本人の強い意志だったとコーチのブライアン・オーサーは説明する。

「ユヅルはすぐに、それでも試合に出ると言いました。でも私は、彼の体が大丈夫であることをまず確認しなくてはと思った。彼に、『今はヒーローになろうとするべき時じゃない。自分の体がまず第一だ』と言ったんです」

 だがそれでも羽生の意志は固かった。オーサーは彼の目などをチェックして、脳震盪の兆候が見られないことを確認してから、最終的に本人の意志を尊重することにしたのだという。

5回転倒するも最後まで諦めなかった羽生。

 予定時間よりも50分ほどの遅れで羽生が登場すると、場内は大きな歓声に包まれた。新フリーはシェイリーン・ボーン振付による「オペラ座の怪人」である。だが羽生は冒頭の4サルコウ、そして4トウループと続けて転倒。まだ脚が自分のものではないように、体重を支えきれないように見えた。中盤では絶対に失敗しないと言ってもよいほど得意な3アクセルですら、1回目は降りることはできなかった。

 羽生は結局5回転倒した。それでも最後の最後まで、ジャンプをパンクさせることなく、転んでも、転んでも、諦めずに跳び続けた羽生の演技は、何か鬼気迫るものを感じさせた。

 頭にバンデージ、あごにもバンソウコウをつけた姿でキス&クライに座った羽生は、自分の得点を見ると両手で顔を覆って泣き崩れた。最後まで滑り終えることができてほっとしたのか、あるいはこれほど過酷な状態でも暫定1位になったことに対する喜びの涙だったのだろう。転倒5回でマイナス5ポイント引かれたものの、ほとんどのジャンプの回転が回りきっていたこともあり、フリーも総合も2位を保った。

・かつてはなかった男子の衝突事故。

 このような事故が起きると、フィギュアスケートの選手がいかに危険と隣りあわせで滑っているのか、改めて思い知らされる。

 練習中の大きな接触事故は、これまでも時々起きていた。年季の入ったスケートファンならば1991年の世界選手権のウォームアップの最中、伊藤みどりがフランスの選手に激突された事故を覚えているだろう。リレハンメル五輪では、フリーの前日にオクサナ・バイウルがドイツの選手と衝突して脚を3針縫うという怪我をしながらも金メダルをとったことは大きなニュースになった。人数の多いペアやアイスダンスの練習ではもっと接触が起こりやすく、選手生命に関わるような大きな事故も何度か起こっている。

 だが男子シングルでの衝突事故というのは、かつては聞かないことだった。

 五輪のウォームアップでペアの接触事故が起きた2002年、まだ現役だった本田武史が「男子シングルでは衝突事故というものは起きたことがない。皆周りをよく見ているし、直前のギリギリになっても絶対によけられる反射神経があるからだと思います」と語ってくれたことがある。

・難易度の上昇に伴い増える事故。

 状況が変わったのは現在の採点システムになってから、それもごく最近のことである。201010月末にスケートカナダの公式練習中、パトリック・チャンとアダム・リッポンが激突。同じ年の12月には北京で行われたGPファイナルの練習中に小塚崇彦と高橋大輔が衝突した。2012年の中国杯では、やはりアダム・リッポンが中国のナン・ソンと激しく衝突し、ソンは脳震盪で病院に運ばれた。

 こうしたトップの男子たちの反射神経をもってしても、事故が避けられなくなってきたのはなぜなのか。それは、今の採点システムで求められているものが以前に比べて格段に過酷になったためではないだろうか。

 現在の採点システムでは、スケーティング技術が具体的な数値で評価を受けるようになった。それだけに選手も以前よりさらに、スピードを上げることを意識して滑っている。またジャンプのみならず、スピンやステップに関しても細かくレベル分けされるため、気を抜ける部分がまったくなくなってしまった。わずか6分間の間に必要なことをさらっていくためには、どの選手も余裕などなく、自分のことに集中しきっているのだ。

・求められるISUの対応。

 今回の事故でも、倒れた選手がいるのに、ほかの選手が立ち止まらずウォームアップを続けていたのは、一般の目からは異様にも見えたことだろう。だがこれは実は毎回のことで、選手は普段から、何が起きても自分のことに集中するよう指導を受けているのだ。

 もっとも今回の医療班の対応の遅さは、批難されても仕方がないだろう。担架の用意もなく羽生を歩かせたことにも、大きな疑問を感じる。

 トップレベルの競技スポーツには過酷さとリスクが伴うのはやむを得ないことではある。だが今回のような事態を避けるためにISUがどのようなことができるのか、改めて考えていく必要があるのではないだろうか。

・なぜそこまで無理をしたのか?

 出場したときの羽生の体がどのような状態だったのか、それは本人にしかわからない。だが医療関係者たちからは、あの事故の直後に滑ったのは無謀だったのではという声も聞かれる。4分半のフリーは、調整の完璧なアスリートにとっても体に大きな負担がかかる。一体なぜ、そこまで無理をしたのだろう。

 羽生は10月初頭に予定していたフィンランディア杯を、腰痛のために欠場している。そしてシーズン初戦であるこの中国杯では、SPでジャンプミスが出て2位スタートという予想外の結果になり、「最悪でした。悔しいです」と苦笑いして見せた。

 五輪チャンピオンとして、シーズンの初試合で中途半端なことはできない。羽生の中に、そういう強い気持ちがあったに違いない。五輪王者、世界王者としての誇りが、途中で棄権することを許さなかったのだろう。

 試合後、日本に帰国して精密検査を受けた羽生だが、「頭部挫創、下顎挫創、腹部挫傷、左大腿挫傷、右足関節捻挫で全治23週間」という診断で、3週間後のNHK杯に向けての調整が微妙な状況にある。

・この事故の後で滑りきったコフトゥンの強さ。

 SP、フリーともにトップを保って優勝したのは、ロシアのマキシム・コフトゥンだった。

 凄惨なアクシデントは、他のスケーターの精神にも大きな動揺を与える。2000年ニース世界選手権で、ウクライナのペアが転倒して男性が脳震盪を起こした直後、次の滑走だったカナダのペアは脚に力が入らず、演技を途中で中断したことがあった。そのくらい、選手の事故が次に滑る選手に与える影響は大きいのである。

 19歳のコフトゥンにとって、羽生のフリーの後に集中して演技をすることは、簡単なことではなかっただろう。だが4回転サルコウで転倒した以外、全体をまとめてトップを保ったことは賞賛に値する。

 また羽生と衝突したエン・カンは、いったんは棄権宣言をしたものの、羽生の続行を耳にして本人も棄権を撤回。SP3位から順位を落として総合6位となった。

 この中国杯で羽生の見せた強さと勇気は、多くの人々に感動を与え、今後も語り継がれていくだろう。だが同時にこの一件が、怪我をしても無理にでも滑るのが強さの証明、という風潮を選手たちの間に広げていくようなことがあってはならないと思う。

 思いがけない展開の中国杯の男子だったが、このようなドラマだけは二度と起きないことを願いたい。

 

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